良い決算書・悪い決算書

ほぼ全ての税理士事務所は税法別に専用のソフトウェアを導入しています。
まれに申告書を手書きで作成している事務所が見受けられます。手書きだから間違えている、というわけではありません。
しかしこの時代に手書きをしているのであれば、税理士事務所の連絡方法も、FAXなどの過去の方法に頼りがちです。税理士事務所は経理事務の省力化を推進する立場にあるべきです。

申告も今や電子申告が常識となりつつあります。
平成19年度では20％弱であった普及率も現在は70％になっております。きちんと電子申告により整っている申告書は税務署に対しても金融機関に対しても心証は良いです。
また一部金融機関においては電子申告している法人だけが受けられる融資制度もございます。
申告は電子申告であるべきです。

概況書とは略称で、正式名称は法人事業概況説明書と言います。
記載する内容は事業内容を始め、支店や海外取引、従業員等の状況、売上高などの主要な勘定科目などが記載されています。
平成18年度税制改正以前は、提出の義務はありませんでした。改正により申告書の添付書類と定められ、これ以降は提出義務があります。
何割かの申告書において、この概況書の添付が無いようです。
このままでは義務違反になりますし、税務調査においても不利になります。概況書は必ず添付するようにしましょう。

正式名称は勘定科目内訳明細書と言います。名前の通り、それぞれの勘定科目の内訳を細かく示すことを求めています。
例えば期末売掛金が得意先30社分で、合計3,000万円であれば、30社それぞれの得意先の名称や所在地を記載することとなります。一方で、税務署側からの記載のルールについては「相手先別期末現在高が50万円以上のものについては各別に記入し、その他は一括して記入してください」となっています。
問題はこのルールを拡大解釈して、その他を不相当に乱用している内訳明細書です。その他の欄の金額は僅少であるべきですが、その他として数千万円や数億円となっているものです。売掛金や未収入金の残高把握が正確にできていれば、このような内訳明細書にはならないです。税務署に対しては経理が杜撰であるように見られます。
金融機関に対しては回収不可能な不良債権を隠しているのでは？と疑われます。ですので取引先の名称に、その他が出てくることは望ましくありません。期末残高が僅少な取引先でも、内訳明細書には各別に記載されたものが良いです。

上場しているような大企業は、専任の経理担当部署がありますし、適正に経理しているか公認会計士が監査することになっています。しかし中小零細企業は、経理に対する事務費用を負担できません。結果として中小企業の決算書は透明性に欠ける、信頼性に乏しい、と思われております。
この問題点を払拭するために作られたものが、中小企業の会計に関する基本要領です。大企業のような経理負担はかけられないが、主要項目は適正に経理しよう、というルールブックです。このルールブックが適正に適用されているかチェックするものがチェックリストです。正式名称は「中小企業の会計に関する基本要領の適用に関するチェックリスト」と言います。決算書にこのチェックリストが添付されていれば

• 日本政策金融公庫（中小企業事業部）の金利が下がります。
• 日本政策金融公庫（国民生活事業部）の金利が下がります。
• 一部の金融機関では特別な金融商品があります。（中小企業庁のサイトをご確認ください。）
• 保証協会付融資の場合には、保証料の割引があります。

チェックリストはこのように、とても大きなメリットがあります。

税理士法第33条の2の書面添付制度は平成13年に創設されました。
（税理士法33条の2）税理士が申告書の作成に関して計算、整理、相談に応じた事項を記載した書面を申告書に添付して提出することができる。
（税理士法第35条）税務調査の対象となっている申告書にこの添付書面がある場合、国税当局（税務署等）は調査の事前通知を行う前に、まず税理士に対し、添付された書面の記載事項について意見を述べる機会を与えなければならない。分かりにくいですよね^^
一般的な税務調査は（調査日時の決定）→（税務調査）→（修正申告など）という流れです。提出された申告書に、33条の2に定められた書面添付があれば、調査の前に「意見聴取」を行います。
調査官と税理士が面会し、調査官の質問に対して税理士が返答するものです。この意見聴取の結果、調査の必要無しと判断されれば、実地調査がなくなります。納税者から見たらとても有益なものですが、税理士は簡単に書面添付するわけにはいかないです。
この書面添付は、税理士の確認済みの太鼓判を押したような意味合いを持ちます。大きな否認事項が発覚すると、この書面添付自体の信頼性も問われますし、事実隠蔽に該当すれば、税理士にも罰則があるからです。書面添付は納税者と税理士の信頼関係の証とも言えますね。